2012年08月27日

前田敦子の卒業について

atsuko『週刊AKB』の前田敦子卒業記念特集を見ていて、やはりこの人はツキがあるんだなと思った。第一回放送の2009年7月10日は、前田敦子の誕生日でもあり、しょっぱなのコメントが「18歳になりたての前田敦子です」と…。初めの頃の企画で、前田敦子が街に出て、声をかけられるかでは、誰にも声をかけられず、3年前、AKB48は、そんな存在だった。それが、今では卒業の日、プチパレードを実施しようとしても、人が集まりすぎて危険ということで中止になるまでの人気者になっている。

未だに、前田敦子のどこがいいんだ?
なんで、あんなに人気があるんだ?

と思う人も多いように思う。自分ももともとその一人で「記号の森のAKB48」や「前田敦子の超越論的現象学」で、できるだけ色メガネをかけないで、あっちゃんのありのままを見ようと試みたが、結論といえるものはみいだせなかった。

しかし、『週刊AKB』のAKBとしての最終出演回で飛び込み取材に応じる浴衣姿の前田敦子を見ていて、なんとナチュラルなんだろうということと、ひょっとして、芸能界の中で何かを卒業する上で、いちばん円満な、波風もたてず、やることはやり、いろんな大人の組織に迷惑もかけず、いいやめ方をしているのではないかと思った。

以前、「AKB48総論-キャズムを超えたアイドルたち」で、秋元康は肝心な時には、「川」の歌を書くと書いたが、前田敦子の卒業ソングは「夢の河」だ。

夢の河を渡った舟が 静かに岸に着く夜明け前
初めての大地に一歩 足を今踏み出す

これは「RIVER」で歌っていた、川の向こうの世界の話だ。キャズムを超えて、向こう岸にたどりついた話だ。だが、他のメンバーはいない。ひとりぼっちだ。

ここはどこなのだろう? 空を見上げて探した星
私いつの間にか 一人はぐれてしまったよ

なんと、あんなに元気よく大勢で川を渡るんだと言っていたのに、川を渡りきったのは、前田敦子一人なのだ。

夢の河を渡った舟が 静かに岸に着く夜明け前
私から最初に一歩 先を歩こう

後から誰かが追随してきそうな気配はあっても、今は一人なのだ。上で、こんなに円満に卒業したアイドルはいないと書いたが、それがこの歌詞にも自然に表現されている。

夢の河は過去から今へ 今から未来へと流れてく
それぞれの希望の舟を 誰も漕いでいるんだ
夢が叶ったら 迎えに来るよ

過去から今へ、今から未来へと流れていく この卒業の流れには、大きな飛躍や断裂がなく、過去から今へ、今から未来へ、河のように流れていく様子となっている。

超自然体の前田敦子が「週刊AKB」の卒業記念特集で発していた言葉が「かわいそう、かわいそう」だった。前田敦子の別取材で用意された屋形船をボートで追っかける「週刊AKB」の後藤プロデューサーが、食事もしないで、ボートでコンタクトをとろうとしている姿に「かわいそう」を連発して、アイスキャンディを手渡そうとする。まぁ、番組の演出といえば、それまでだが、屋形船の新聞社のスタッフにも気を使い、ボートのテレビスタッフにも気を使い、自然な笑顔をふりまいていた。ビールを飲める年齢にもなっている前田敦子だが、その笑顔のナチュラルさはデビュー当時とほとんど変わらない。そしてやや内向きな性格もなんら変わっているような気がしないのだ。

今回は、AKB48の解散ではなく、前田敦子の卒業であって、キャンディーズの解散、ピンクレディの解散、おニャン子クラブの解散、山口百恵の引退、後藤真希の引退と比較するのもおかしいのだが、こんなに上手に次のステップに踏み出す姿はなかなか芸能界では見たことがない。

AKB48のセンターでありながら、AKB48にいちばん遠いところに最初からいたかもしれないなと、今更気がつく。

前田敦子が演じているドラマ、映画はほぼ見てきたが、いちばんいいなと思うのは、2007年に公開された市川準監督の映画「あしたの私のつくり方」だったりする。黒の服が好きだったり、親友の佐藤由加理と釣り堀で語っていたように、根は無口なあっちゃん。「あしたの私のつくり方」では、素直に役に入っていたような気がする。

AKB48として人気が出てしまったのは、彼女の夢にとって、本当は遠回りだったのかもしれない。

という意味で、AKB48をやめることで、本来の彼女らしさが演技でも戻ってくるかもしれない。彼女だけが、ここまで話題になるのは、ゴリ押しでもなんでもなく、現在的なものを多く持っているからだろう。松田聖子が、聖子ちゃんから聖子さんに上手く成長したように、前田敦子も、あっちゃんから、◯◯◯◯に成長し、息の長い人になることを願う。

卒業おめでとう!!

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コメント一欄

1. Posted by サラマンダー   2012年09月02日 05:03
初コメです。


色々とAKB関係を中心に記事を読ませてもらいました。深いなあとか、なるほど!とか色々な感情(+の意味で)が湧きました。


勝手ながらもっと、色々ななのを見たくなりました。


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30数年広告畑で畑を耕しています(笑)コピーライターでありながら、複雑系マーケティングの視野からWebプランニング、戦略シナリオを創発。2008年2月より某Web会社の代表取締役社長に就任。snafkin7としてのTwitterはこちらからどうぞ。Facebookはこちらから。
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