2012年05月11日

きゃりーぱみゅぱみゅのエクリチュール

caryいいものに出会った時は、いつも考える。これを見て、聴いて、ロラン・バルトが生きていたらどう評価するのだろう。20歳の時に読んでいた「表徴の帝国」。ロラン・バルトが日本を記号論的に解釈した大作だが、それを読んでいる途中に、ロラン・バルトはクリーニング屋の車に轢かれて、あっけなくこの世を去った。多摩川沿いのルートマイナスRというジャズのお店のサントリーホワイトのラベルに「ロラン・バルトは死んだのか」と書いて酔いつぶれた。ロラン・バルトは恣意的な意味性を極度に嫌った。広告写真を題材にして、いかにそこに恣意的なメッセージが込められているか病的に解説しているものもあった。彼が評価を高くしているものは、恣意的なものや、作為的なものや、経済性や社会性が込められていない、自然な思いや意志が仕方なく詰まっているもの、純粋で本質的に提示される何かだった。「零度のエクリチュール」は難しく解釈すればいくらでも難しくなるが、端的に言えばそういうことだ。何ものにも利用されない自由な表現、それをみつけるためにいろんな視線を注いだ。

きゃりーぱみゅぱみゅについては、今週のananで大特集しているが、それはKAWAII JAPANの文脈で捉えられ、どちらかと言えばNHKの「東京カワイイTV」を焼き直したような編集だ。ファッション誌だから仕方ないのかもしれないが、きゃりーぱみゅぱみゅの本音が多く語られているのはセブンイレブンに無料で配布されている「7ぴあ」5月号の方だ。

“好き”と“わがまま”をしっかり詰め込む===
「確かに私は、好きなものはとことん好きだし、やりたいし、それってある意味、わがままでもある。中田さんは私のことを知ったうえで曲をつくってくれるので、すごく私っぽさが出たと想いますね。
 こうしたいっていうアイデアは自分で考えます…」

KAWAII世界であることも確か、原宿系であることも確か、しかしそれだけではきゃりーぱみゅぱみゅは生まれなかった。“好き”と“わがまま”を押し通すことが難しい今という時代にしっかりそれを実現し、アーティスティックなレベルまで高めながら、人を明るく元気にするオーラを好き放題に発散する。「PONPONPON」では自分の好きな世界をぎっしり埋めた世界となり、「つけまつける」でも自分の好きな物語の世界をアレンジ、そして「CANDY CANDY」では余計なものは削ぎ落とされ、エンタテインメント・パフォーマンスとしてかなりなものに仕上がっている。

きゃりーぱみゅぱみゅは一人なので、にぎやかしのために1号・2号・3号・4号をつくってグループとして演出し、ダンスの上手い偽物に蹴りを入れる(笑)

自分が「CANDY CANDY」のPVで好きなシーンは、典型的な日本の中上級の住宅街を食パンをくわえながら走っているところ。ここでは街の時間や社会の時間は止まっているように見える。動いているのは、きゃりーぱみゅぱみゅの気持ちだけだ。しかも食パンをくわえているので、そんなくだらない日常さえも受け入れている逞しさがあるのだ(笑)

海外でもきゃりーぱみゅぱみゅが評価が高いのは、KAWAIIだけではない、この世界がどんな状態であっても野生児のように走り抜ける軽やかさ、笑い飛ばせる天真爛漫な自由意志がむんむんとしているからではないかと思う。

それがまた、KAWAIIのかもしれないが…

少し前まではグループアイドルが隆盛で、アイドルはどこに行くのかと思われたが、彼女らは経済的な恣意性や大人の意味付けによって急激に傷んだ。ぼろぼろになるまで消費され、魅力がどんどん擦り減っているように見える。

ロラン・バルトは「表徴の帝国」で、日本は遊ぶ時でも集団で労働のような制約を好む民族であるとともに、「空虚」を美の意識まで高める不思議な民族だと評した。そしてもちろん、ロラン・バルトが興味があったのは「空虚」の方で、それと零度を重ねあわせているふしもあった。

きゃりーぱみゅぱみゅは、すべてが「空虚」であっても、好きなものとわがまままでに可愛いものに固執する飛び抜けた存在。意味性が強くなり濃縮された世界の反動だ。

アキバ系も原宿系も日本の個性といえば個性だ。

しかし根底に強い個の意志がなければ、人を感動させることはできない。

「きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ」と自分が可愛いと思っている言葉をしこたま並べてそれを正式名といって楽しんでいる女の子。

これからどんなはじけ方をするのか、楽しみだ!!












コメント一欄

1. Posted by dissertation editing service   2013年03月13日 16:04
4 フランス本土の他の地域と比較した場合、コミューンのこの数値が高い場合は、特別なものではありませんが、欧州レベルで調べたときに、それはフランスのコミューンの独特の状況を明らかにする。ありがとうございます。

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30数年広告畑で畑を耕しています(笑)コピーライターでありながら、複雑系マーケティングの視野からWebプランニング、戦略シナリオを創発。2008年2月より某Web会社の代表取締役社長に就任。snafkin7としてのTwitterはこちらからどうぞ。Facebookはこちらから。
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