2011年06月27日
戦略シナリオの怖さを書いておく-ノンフィクション篇
皆さんは「戦略シナリオ」ってご存じでしょうか? 小難しい理論のもと複雑なことやってんじゃないのって、ことで一般の人にはあまり感心度が高くありませんが、また、業界ではこのネタばらしは御法度な部分も多いので、わかりやすい例はあまり公開されていません。
あたりさわりのない例としては「アセロラは体にいい」→「アセロラは肌にいい」とコードをかえて、媒体もインナーに換えていった成功例があります。
えっ、それだけのスイッチと思われるかもしれませんが、何故そうしたらいいかについては膨大な資料と洞察がありますが、「戦略シナリオ」っていうのは、すべてのシナリオの根幹をいじるってことで、遺伝子組み換えみたいなもので、目標コードはとてもシンプルなものです。
あたりさわりはありますが、自分がかかわったものでもう会社もなく(つぶれつつある)というものを紹介します。
例えば、超大手金融会社のT(現在会社更生手続中)が2003年、会長の逮捕で信用が一気に揺らいだことがあります。当時はいろいろ囁かれたにしろ、日経ビジネスや報道番組でもその経営を誉めていたという時代です。いわゆるワンマン経営の柱が折れたことで、広報的にどうするかでいろんな戦略が練られました。いろんなことが語られたはずですが、実際に採用された案は、この「戦略シナリオ」の提案でした。しかも極端にシンプルな案です。
「私たちはTです」を広告の主要部分、CMではラストに複数の女性が決め文句として語るというものです。
この危機を乗り越えるために、この企業の根幹コードをいじる必要性がありました。
Tはワンマン会社→そのワンマン経営者が逮捕→Tはもう終わり を「私たちはTです」とすることにより、Tは会社組織であり、何事も協議で経営されている。ことと、何より「私たち」と複数形にすることにより、社員を感じさせ、ワンマン会社で働いている社員も大変だよなぁとサラリーマン&OLの同情を寄せれば切り抜けることができるんじゃないかという…コピーライターの提案がそのまま実践されました。
そんなしょうもないセンテンスで会社が救われるかと思われるかもしれませんが、このコードを新聞&TVで大量に流し続けると、Tは私たちなんだよなぁ、ワンマン経営者がいなくなって、かえって良くなっていくじゃないの、社員はがんばってるんだよなぁと…実際に印象がアンケートでも変わっていきました。
このコピーライターは顧客のOL率(女性率)が低いという問題があった時にも、放送コードをパスする「戦略シナリオ」を使っています。
「いちばんがいちばん」というコピーです。
女性ダンサーが着替えのロッカールームで「いちばんがいちばん」「いちばんがいちばんか」という会話をするものですが、女性からの好印象度で他社大手から差がつけられていた時、四の五の関係なしに「いちばんがいちばん」という絶対ブランド的な一行を植えることで、選択の時、頭をよぎればということで、しばらく流し続けられました。
その後、その実績をかわれて、CSRラインの企業広告を1年まかされることになるのですが、横やりが入ってきました。昔からおかしなところでつながっている広告代理店が…
「Tはコンプライアンス」というわけのわからんコードをゴリ押しして、すべての媒体をうばっていきました。これは危険コードです。コンプライアンスがいちばんなってない企業が「Tはコンプライアンス」と言うことで反感を買うことは目に見えてます。また、それを前面に出すことによって、過払い請求は拍車をかける。想像していた通りです。Tは過払い請求の餌食になり、会社更生の道を歩んでいきました。まぁ金利がいちばん高かったというのもありますが…自分で自分の墓穴を掘ったのは事実でしょう。
このように「戦略シナリオ」は使い方を間違うと大やけどしてしまいます。反感を買うようなコード換えがおこった時、雪崩のようにすべてが崩れさっていくことがよくあります。
自分の成功例では、いつも素直なコード換えが多いですね。日本酒でなんとか造り、なんとか仕込みとか、やたらそんなことを言い合っていた時代がありました。でも調べてみると、大手日本酒メーカーのつくってるものなんて地酒の足下にもおよばない場合が多い。そんな時に
「能書きはいい、飲めばわかる」
なんてやると、ピシャリと当たる。この時は能書きがいえない日本酒だったわけですが(爆)日本酒に能書きなんていらないよと開きなおることで、そうきたかと共感を得ることができる。また、中尾彬さんを持ってくることでリアリティが生まれる。商品ネーミングも辛口をそのまま持ってきて、伏見の女酒というイメージを男酒にまでイメージづけることができた。「辛口はなんとか正宗」というコードを崩してしまい未だに売れ筋となっている。自分的には美味しいとか旨いとかはいってない。「飲めばわかる」ということで、買ってくれる人の判断にまかせてるので罪の意識も少ない(笑)
面白い例は他にもいくつもありますが、気になるのは最近、一気にAKB48の戦略シナリオ(戦略コード)がねじ曲がったということです。ここにもTと同じ広告代理店がかんでますが
「AKBは会いにいけるアイドル」
「AKBはどんなに売れたって劇場型アイドル」
と真逆のプロモーションを行って話題をさらっているように見えますが
マスコミを一斉に使って、おかしな戦略コードを使い始めています。
「江口愛実は実在する」→「江口愛美は実在しない」で
思いっきり騒がせておきながら
「江口愛実は実在するって思っていた人は少ない」
こんな遊びで怒ってる奴は馬鹿で広告的には良かった、と。
こういう詐欺まがいのことを一度でも行うと
「AKBは会いにいけるアイドルでない場合もある」
「AKBはどんなに売れたって劇場型アイドルでない場合もある」
と海老のしっぽがついてしまいます。
「AKBは会いにいけるアイドル」このコードのみがすべてを支えていたのに、今回のグリコのプロモーションですべてが崩れさった。
NMB48に関しては、オリコン週間1位をとらなければブルマ公演など、オリコン週間1位をとることが目的となっている。
もはやAKBは国民的アイドルグループで「会いにいけるアイドル」ではなくなってるんですよ。と伝えたいならばそれはそれでもいいだろう。しかしもともと完璧ではないキャラクターの集まりだから、「会いにいけるアイドル」がとれたら、ただただ完璧でないアラが見えるだけだ。
予定調和の破壊ではなく、予定飽和が始まっている。
戦略シナリオの崩壊が、この理想形と思われたグループにとって、どんな影響をおよぼしていくのか、かなり好きだっただけに、目撃していくにはつらいものがある。ただ戦略シナリオ崩壊のケーススタディとしてはいい例となるのは確かだろう。
あたりさわりのない例としては「アセロラは体にいい」→「アセロラは肌にいい」とコードをかえて、媒体もインナーに換えていった成功例があります。
えっ、それだけのスイッチと思われるかもしれませんが、何故そうしたらいいかについては膨大な資料と洞察がありますが、「戦略シナリオ」っていうのは、すべてのシナリオの根幹をいじるってことで、遺伝子組み換えみたいなもので、目標コードはとてもシンプルなものです。
あたりさわりはありますが、自分がかかわったものでもう会社もなく(つぶれつつある)というものを紹介します。
例えば、超大手金融会社のT(現在会社更生手続中)が2003年、会長の逮捕で信用が一気に揺らいだことがあります。当時はいろいろ囁かれたにしろ、日経ビジネスや報道番組でもその経営を誉めていたという時代です。いわゆるワンマン経営の柱が折れたことで、広報的にどうするかでいろんな戦略が練られました。いろんなことが語られたはずですが、実際に採用された案は、この「戦略シナリオ」の提案でした。しかも極端にシンプルな案です。
「私たちはTです」を広告の主要部分、CMではラストに複数の女性が決め文句として語るというものです。
この危機を乗り越えるために、この企業の根幹コードをいじる必要性がありました。
Tはワンマン会社→そのワンマン経営者が逮捕→Tはもう終わり を「私たちはTです」とすることにより、Tは会社組織であり、何事も協議で経営されている。ことと、何より「私たち」と複数形にすることにより、社員を感じさせ、ワンマン会社で働いている社員も大変だよなぁとサラリーマン&OLの同情を寄せれば切り抜けることができるんじゃないかという…コピーライターの提案がそのまま実践されました。
そんなしょうもないセンテンスで会社が救われるかと思われるかもしれませんが、このコードを新聞&TVで大量に流し続けると、Tは私たちなんだよなぁ、ワンマン経営者がいなくなって、かえって良くなっていくじゃないの、社員はがんばってるんだよなぁと…実際に印象がアンケートでも変わっていきました。
このコピーライターは顧客のOL率(女性率)が低いという問題があった時にも、放送コードをパスする「戦略シナリオ」を使っています。
「いちばんがいちばん」というコピーです。
女性ダンサーが着替えのロッカールームで「いちばんがいちばん」「いちばんがいちばんか」という会話をするものですが、女性からの好印象度で他社大手から差がつけられていた時、四の五の関係なしに「いちばんがいちばん」という絶対ブランド的な一行を植えることで、選択の時、頭をよぎればということで、しばらく流し続けられました。
その後、その実績をかわれて、CSRラインの企業広告を1年まかされることになるのですが、横やりが入ってきました。昔からおかしなところでつながっている広告代理店が…
「Tはコンプライアンス」というわけのわからんコードをゴリ押しして、すべての媒体をうばっていきました。これは危険コードです。コンプライアンスがいちばんなってない企業が「Tはコンプライアンス」と言うことで反感を買うことは目に見えてます。また、それを前面に出すことによって、過払い請求は拍車をかける。想像していた通りです。Tは過払い請求の餌食になり、会社更生の道を歩んでいきました。まぁ金利がいちばん高かったというのもありますが…自分で自分の墓穴を掘ったのは事実でしょう。
このように「戦略シナリオ」は使い方を間違うと大やけどしてしまいます。反感を買うようなコード換えがおこった時、雪崩のようにすべてが崩れさっていくことがよくあります。
自分の成功例では、いつも素直なコード換えが多いですね。日本酒でなんとか造り、なんとか仕込みとか、やたらそんなことを言い合っていた時代がありました。でも調べてみると、大手日本酒メーカーのつくってるものなんて地酒の足下にもおよばない場合が多い。そんな時に
「能書きはいい、飲めばわかる」
なんてやると、ピシャリと当たる。この時は能書きがいえない日本酒だったわけですが(爆)日本酒に能書きなんていらないよと開きなおることで、そうきたかと共感を得ることができる。また、中尾彬さんを持ってくることでリアリティが生まれる。商品ネーミングも辛口をそのまま持ってきて、伏見の女酒というイメージを男酒にまでイメージづけることができた。「辛口はなんとか正宗」というコードを崩してしまい未だに売れ筋となっている。自分的には美味しいとか旨いとかはいってない。「飲めばわかる」ということで、買ってくれる人の判断にまかせてるので罪の意識も少ない(笑)
面白い例は他にもいくつもありますが、気になるのは最近、一気にAKB48の戦略シナリオ(戦略コード)がねじ曲がったということです。ここにもTと同じ広告代理店がかんでますが
「AKBは会いにいけるアイドル」
「AKBはどんなに売れたって劇場型アイドル」
と真逆のプロモーションを行って話題をさらっているように見えますが
マスコミを一斉に使って、おかしな戦略コードを使い始めています。
「江口愛実は実在する」→「江口愛美は実在しない」で
思いっきり騒がせておきながら
「江口愛実は実在するって思っていた人は少ない」
こんな遊びで怒ってる奴は馬鹿で広告的には良かった、と。
こういう詐欺まがいのことを一度でも行うと
「AKBは会いにいけるアイドルでない場合もある」
「AKBはどんなに売れたって劇場型アイドルでない場合もある」
と海老のしっぽがついてしまいます。
「AKBは会いにいけるアイドル」このコードのみがすべてを支えていたのに、今回のグリコのプロモーションですべてが崩れさった。
NMB48に関しては、オリコン週間1位をとらなければブルマ公演など、オリコン週間1位をとることが目的となっている。
もはやAKBは国民的アイドルグループで「会いにいけるアイドル」ではなくなってるんですよ。と伝えたいならばそれはそれでもいいだろう。しかしもともと完璧ではないキャラクターの集まりだから、「会いにいけるアイドル」がとれたら、ただただ完璧でないアラが見えるだけだ。
予定調和の破壊ではなく、予定飽和が始まっている。
戦略シナリオの崩壊が、この理想形と思われたグループにとって、どんな影響をおよぼしていくのか、かなり好きだっただけに、目撃していくにはつらいものがある。ただ戦略シナリオ崩壊のケーススタディとしてはいい例となるのは確かだろう。
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コメント一欄
4. Posted by gendoukobayashi 2011年06月29日 22:01
新記事での解釈を楽しみにしております。
どうも、「48」グループが瓦解の寸前のようで急坂で踏みとどまっている、大きすぎる雪玉に見えてきました。
どうも、「48」グループが瓦解の寸前のようで急坂で踏みとどまっている、大きすぎる雪玉に見えてきました。
3. Posted by snafkin7 2011年06月29日 19:48

どんなことでも着地、着陸、山を降りる時が難しいわけですが、AKBは踏み間違わないだろうなと思ってましたが、思いっきり乱気流してますね。とても残念です。
2. Posted by snafkin7 2011年06月29日 19:42

次のブログに書くつもりですが、仮題「乃木坂46は失敗する-フラクタル視点から」。このグリコといい、乃木坂46といい、電通にもちかけられたり、ソニーにもちかけられたり、自主性がないというか、商売っけたっぷりすぎますね。すべてを受け入れるのはいいですが、また自分で自分のつくったものを壊すのはいいですが、あまりにも無責任すぎますね。AKBは秋元プロデュースをやめたところから成功してますから、自分プロデュースという実感がもてないのもわかりますが、このやり方はすてっぱちですね。ソニーの子会社から移籍して売れ出して、逃した魚たちと思っているようですが、ソニーだったから売れなかった、ソニーのままだったら売れなかった、という見方もできます。そのことをソニーも気がついてないのは笑いますね。秋元氏は、まぁそれも承知で、自分と闘うつもりでしょうが、肝心のコアなファンなんかつくわけがない。どんなに美少女を揃えたところでダメなことの理由をブログに書くつもりです。
1. Posted by gendoukobayashi 2011年06月29日 19:10
今回の江口騒動は嫌な波紋を作り出しそうですね。
「48」グループは、まだどこかのごり押しで売れそうですけど、この分だと支えていたタニマチの方々がそっぽ向くということが考えられますね。
こちらも大好きなグループだっただけに切ない思いです。
「48」グループは、まだどこかのごり押しで売れそうですけど、この分だと支えていたタニマチの方々がそっぽ向くということが考えられますね。
こちらも大好きなグループだっただけに切ない思いです。