2011年01月09日

劇場という衝撃-幻の一曲(ライダー)にAKB48の原点を見た

riderNMB48の初公演がAKB48の初期チームAの3rd公演「誰かのために 2006〜2007」の再演だというので、AKB48のこのA3rdDVDを取り寄せていた。本当は比較する目的だったのだが、NMB48のチケット抽選が全く当たらない。NMB48の方は初めから、テレビ・雑誌などメディアがバックアップしているから、この抽選当たらない現象は延々続くのだと思う。

しかし、このA3rdDVDを見ていると、私が知っているのは佐藤由加理だけなのだが、計9人で歌っている「ライダー」という曲が何故か気になり、何度も何度も再生することになった。メッセージ対象としては「あなたがいてくれたから」のようなファンへ向けてのものだということがわかるが、メイン二人(駒谷仁美・渡邊志穂)の仕草と表情がかなり複雑なのだ。

君はバイクに乗って
風の中を
どこへ向かって走っているの?
空は晴れているかい?

I miss you!
Yes
忘れないよ
君のことを……


急に遠い街に引っ越しして会えなくなったライダーへの気持ちを歌った歌なのだが、間奏の時に舞台は暗くなって、全員が右手を左胸にあてたりするシーンがあって、まるでレクイエムなのだ。

この曲は何をきっかけに書かれているのか調べていくと、AKB48劇場の初期に毎日通っていたライダーがおり、半年たった頃には、この曲のメイン二人(駒谷仁美・渡邊志穂)推しのコアなファンとなっていたが、ある時、劇場内で脳内出血で倒れてしまう。病院に運ばれ、この二人からのお見舞いMDなども届けられ、一時持ち直すが帰らぬ人となり、その時、劇場支配人の戸賀崎氏と駒谷さんと渡邊さんもお通夜に参列したという。

そして秋元康は、この経緯をただ悲しい歌にするのではなく、どこかで元気に走っているライダーに別れを惜しむ歌として昇華させ、AKB48の歴史(精神)に刻んだということらしい。

こんなファンと近い、こんな人間らしい、こんな優しい話があるんだろうかと、この事実を知った時、胸がしめつけられるくらい痛くなった。

それから、またこの曲を何度も何度も見た。駒谷さんの耐えられないが延々笑顔をつくっている意味にまた感動した。

この曲の9人中、メイン二人を含め7人はAKB48を卒業しており、佐藤由加理、浦野一美はSDN48に移籍し、現在この9人は誰一人AKB48にはいない。この9人の「ライダー」は振りとしては、幼く見えるが、アイドルらしいといえばこんなに初々しいアイドルはいないなというくらいフレッシュな印象だ。歌が特に上手いわけでもない、ダンスも特に上手いわけではない、しかし、応援されて輝いている美しさはかなりのレベルだ。

この初期チームAの3rd公演「誰かのために」をNMB48の初公演に持ってきた意味がなんだかわかったような気がした。この公演にはAKB48の初期のいちばん大切なものが凝縮されているからだ。

昨日、NHKでAKB48のドキュメント-1ミリ先の未来へが放送され、そのチーム力の素晴らしさにあらためて魅せられたが、さらに深いこういった話が奥にあるとはとなんともいえない気持ちになった。
朝日新聞では、NMB48のキャプテン山本彩が「今後はミスをなくし、NMBオリジナル公演を迎えたい」他メンバーが「メンバーの個性をもっとたくさんの人に知ってもらうために番組が欲しい」「大阪城ホールでコンサートがしたい」とか述べているが、それはそれで次世代だからいいのかもしれないが、あまりに早くメディアに立ちすぎていて、恵まれすぎていることがどうなるのかといういらぬ心配をする。

駒谷仁美さん、渡邊志穂さんにとって、こういった経験は何ものにも代え難いのではないかと思う。ご両人のブログを見ると、芸能界でがんばっている姿が伝わってくる。そして、「ライダー」という曲は、AKB48らしいという意味でAKB48の中でいちばん素晴らしい曲ではないかと思う。

こんな心のこもったメッセージはメディアを介してはありえない。

今後のAKB48の役割はこういった経験値を積み上げてきたアイドルとして、メディアの触媒となって、旧メディアに刺激を与え、新メディアに新しいヒントを多く注入いって欲しいと思う。

AKB48劇場は、クサイいい方だが人生の劇場なんだなと思う。この秋葉原のこの小さな装置は本当に日本に大きな影響を与えているなと思う。NMB48に関しては、メディア側からの安易な応援(利用)にうかれるのではなく、劇場をもっと基点にすべきだと思う。メディアにのることはいいことだが、どこかで見極めも必要だ。

メディアマスター、そろそろ、スローなブギにしてくれ!!



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コメント一欄

4. Posted by ゲンドウコバヤシ   2012年12月12日 16:43
佐々木さんへ
ライダーさんは初日からAKBの観客となっていた友人に誘われたことがAKBとの関わりの始まりだと聞きます。
つまり、「神7(本来、この呼称は最初の観客のことだそうです)」のひとりとご友人のようです。
3. Posted by 佐々木   2012年12月01日 13:55
ライダーさんは、伝説の最初に、AKB48
見た7人の一人ですか?
2. Posted by sk2   2011年09月13日 23:00
あなたの心配が現実のものとなってしまいましたね
1. Posted by 武田   2011年07月27日 12:13
いい事言いますね

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