気がつけば、ネットワークはなくなっていた。
同時期に発売された雑誌で、ソーシャルメディアの扱いについて面白い比較ができる。一つは「宣伝会議 2010.9/1号」もうひとつは「日経エンタテインメント2010.10月号」だ。
「宣伝会議」の方は、消費者と直接つながるソーシャルメディアの海外と国内の動向を報告し、その重要性とソーシャルメディアをどうマーケティングに取り込むかを考察している。
一方「日経エンタテインメント」はアイドル、女優、モデルなどの人気ランキングに大変動がおきていて、その理由の一つにソーシャルメディアがあるとし、ファンとタレントとの距離が思い切り縮まったことによるとしている。
極端なことをいうと、前者はネットワークは存在するので、うまくマーケティングしなければいけないという視点、後者はもうネットワークは存在せず、どのように素をうまくさらけだすかがキーとしている。
ネットワークをどう定義するかだが、複雑系のスモールワールドネットワーク(何次かの隔たりを経て世界中の人はみんなつながっている)を典型とすれば、ツイッターやブログ、Youtube、ニコニコ系、これらはダイレクトラインで、もはやネットワークの概念はすっとんでいる。輸入理論ばかり気にして自分の頭で考えるのが苦手になってしまった私(たち)は、気がつくのが遅すぎたかもしれない。「日経エンタテインメント」が事例で強烈に示しているように、今年爆発しているガールズパワー現象は、このことを明確に証明している。
ここ最近、AKB48をはじめ至近アイドルをネットワーク理論を使って読み解こうとしていたが、うまくいかない。なんのことない、これらのコミュニケーションには既にネットワークはなくなっているのだ。いろいろな弊害があったとはいえ、AKB48の公式ファンクラブもなくなる(柱の会廃止)ことにもつながっている。旧式のネットワークは逆に邪魔な存在になる時さえあるのだ。
北川景子とブログの関係
ほしのあきとブログの関係
西野カナ、木村カエラとYoutubeとケータイの関係など
ファンと直接つながり、素を出しながらファンと育つスタイルがうけているのだ。
ツイッターでは、AKB48の篠田麻里子のファンとのつながりが凄いと個人的には思う。メンバーの素の姿を写真付きで頻繁にツイートしているからだ。貴重な秘蔵のブロマイドを無料で配布しているようなもので、こんなことは昔では考えられないことだ。ファンクラブに入って、会報誌でも手にしなければこんなことはありえない。今、メンバーが何をしているか逐一報告してくれる。前田敦子が顔よりでかい長崎ちゃんぽんを幸せそうに食べている姿が無料で数秒後に送られてくる。
今年のガールズグループ乱立、雑誌モデル旋風、すべてソーシャルメディアが関与している。
これらの決して大規模でないクラスターの支持は、商品や広告、マーケティングの未来図を端的に表しているのではないかと思う。
「宣伝会議」のようにソーシャルメディアを小難しく語る必要など一切ない。企業がもしソーシャルメディアでつながる場合、北川景子のように、どう素直に素を出せるかにかかっている。遊びとユーモアも必要だ。なんとか売りたいなどの販促意識の入ったものは拒絶されるのは当然だ。
ソーシャルメディアによって、マーケティング革命がおこっているのではない。ソーシャルメディアによって、ネットワークの概念が崩れているので、ネットワークを前提にしたマーケティングは成立しなくなっているのだ。
求められているのは誠実さ。誠実な企業姿勢や事業展開。今年のアナログライブとデジタルツールを利用したガールズ旋風を細かく見ていくことは、ソーシャルメディア、メディア一般の今の理解に非常に役立つと思う。
アメリカがどうの、ヨーロッパがどうのという知識もあったにこしたことはないが、ケータイ、アニメ、アイドル、という日本の得意分野で今まさに日本でおこっていること、ここに一番わかりやすい例がいっぱいあると思う。
次回からは無ネットワーク、分断されたネットワークの中で、メッセージはどう伝わっていくか、コミュニケーションはどう変容しているのかをさらに細かく見ていきたいと思う。
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