2010年05月04日

「参加型」メディアの着地点

2010.05.02 CNET JAPAN掲載

Piperの新作舞台「THE LEFT STUFF」が大阪にまわってきたので、見に行った。今回は「顧客参加型」がコンセプトとなっており、ホールに入ると、いきなり舞台にあがって署名させられるわ(しなくてもいいし・笑・実名を書くとえらいことらなることが最後にわかる・笑)、拍手の数、挙手の数、起立の数、ジャンケンで、ストーリーが変容していき、おそらく東京・大阪・名古屋・広島・仙台公演の演じる数だけストーリーとセリフが変わるという面白い試みとなっている。
言葉だけの「顧客参加型」は意外と多いが、この芝居は、時々顧客も舞台の上にあげられてしまい、そこで口にしたことが、役者のセリフを替えてしまい、2時間半という時間がかなり早く感じられた。また、今回のゲストが初舞台となる相武沙季ちゃんで、一生懸命ついていこうとする姿がとても初々しく、アドリブの歌をちゃんとこなした時、ヒヤヒヤ心配させられながらホッとするという親心のような緊張感も体験できる(笑)
フツー、ここまで偶然性をとりいれると無茶苦茶になりがちだが、どういう展開になろうと、うまく着地するように計算されている、演出家の後藤ひろひと氏の力が光っていた。自らも進行役を演じ、顧客の空気をよみとり、絶妙な舵取りをしていた。「パコと魔法の絵本」など秀逸な作品を書いている力が生で伝わってきたりもした。「参加型」で大事なのは、当然のことながらこういう舵取りの力なんだなとあらためて感じた。
舞台経験豊富な役者、アドリブ気転に慣れたお笑い芸人、初舞台のタレント、それぞれが精一杯自由に演じながら、そして自由に演じさせながら顧客の笑いどころ、泣きどころをキャッチし、うまく着地させようとする演出家、それがこの芝居をとても新しいものにしていたし、見て良かったという充実感も感じさせてくれた。
後藤ひろひと氏はおそらく、2時間半、顧客がどんなことを体験すれば満足するかを充分考え知っている演出家だと思う。着地のさせた方を知っている。顧客目線というか、顧客の心におとすというか、すべてを顧客に返せば、シナリオの広い滑走路ができ着陸できることを知っている。
芝居終了後、立ち上がって拍手する人もかなりいた。すると、「いや、そんな、そんな芝居じゃないし、現実演じてる芝居だけなので、座ってください、ラクにしてください、さっ、」と役者が言って、それでまた爆笑になるという巻き込み方で、ストーリーをかなり変容させてしまった原因となる顧客の前まで行ってうらみをつらつら述べるというおかしみも凄いなと思った。おぉ、あぁ、これがコミュニケーションというものなのだと…。
ちゃんと舵取りをし、すべてを顧客に返す、これが「参加型」メディアが成功する秘訣なのかもしれない。「参加型」という言葉は使うものの、その辺が全然なっていないこともこの世の中多い。 ITの方でも「参加型」の新ツールはいろいろ出てくると思うが、成功する秘訣はそんなにも変わらないものだと思う。


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20数年広告畑で畑を耕しています(笑)コピーライターでありながら、複雑系マーケティングの視野からWebプランニング、戦略シナリオを創発。2008年2月より某Web会社の代表取締役社長に就任。snafkin7としてのTwitterはこちらからどうぞ。

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