2010年05月04日

必要以上に「不況」が報道される理由

2009.01.07 CNET JAPAN掲載

最近、特に美容室や歯医者の経営がツライと聞く。美容室の場合は、「そろそろ行こうかな…」「まだいいか…」で済んでしまい、歯も少し痛む程度なら、「まっ、もうちょい様子をみて…」で済んでしまうから、不景気報道で煽られると、これらの業種は簡単に節約スイッチが入るらしい。
消費者にしてみれば、髪のカットを1〜2ヵ月伸ばそうが、歯の痛みが酷くなるまで1〜2ヵ月ほっておこうが、そんなに深刻になることではないが、経営側にしてみれば、今まで順調に回転してたものが、急に空白ができてしまい、極端に言えば全員がそういうロングサイクルにした場合、その1〜2ヵ月はまったく売上げがないことになってしまう。 そして今後もジリジリ頻度が低くなれば好転する見通しもたたない。
実際、そこまで生活防衛しなければ、この不景気を乗り越えられないかというとそうでもないと思う。必要のないものはどんどんなくなっていけばいいと思うが、 世界金融危機以来のTV・新聞の「不況」「不景気」報道はあまりにも酷すぎると思う。
そして、このワンパターン報道にはいくつかの理由がある。

1. 心理的に恐怖を感じさせられるもの(恐慌・首切り・失業)は視聴率(部数)がとれる
2. 他人の不幸(部屋・食生活)を生でみせることで視聴率(部数)がとれる
3. すべてを金融危機のせいにすることでスポンサーの内実を追求しないですむ
4. マスコミ自体に派遣社員が多いから、派遣切りに執拗にこだわる。かといって、自分は派遣会社に所属しているから派遣会社を追求することはない。
5. TV・新聞の広告不況で、かなり深刻な思いがあり、自分たちの世界観がお先真っ暗であり、それが全面にでてしまっている。

例えば、国内で新車が不振なんていうニュースは世界金融危機の1年以上前から、自分たちで報道しておきながら、それが世界規模になった時、それを線で結ぼうとはしない。国内での新車販売不振の時は、若者の車離れ、環境意識の高まり、情報ツールへの予算流出、買い換えを促進させるほどの魅力的な車がない、今の車が長持ちする、にわか富裕層の崩壊、などいくつも理由があったが、海外規模になると、金融危機、円高だけで片づけてしまう。
本当は海外でも同じ問題をひきずっているはずだ。環境意識の高まり、買い換えを促進させるほどの魅力的な車がないなど。
しかし、それを語れば、車自体を否定することになり、スポンサーの怠慢ぶりを追求せざるをえなくなり、それはひたすら避けたいので、車が売れなくなった(経営不振の)理由を世界金融危機、円高で片づけてしまう。
台風時、わざわざビニールカッパを着てビニール傘をさして、暴風雨の中から実況すると視聴率が伸びるのは事実で、それを毎回アホみたいに実践しているのがTVのバカさ加減だ(笑)「今、私の傘は飛ばされそうです〜」「何々さ〜ん、大丈夫ですかぁ〜、早く安全な場所に移動してくださ〜い」はじめから安全な場所で報道すりゃいいのに、視聴率のためにそれができないでクサイ演出を繰り返す。サスペンスなんかでも、犯人が長々と語るシーンの時、背景が海や滝だと何故か視聴率が伸びたので、たいがいラストシーンは、そんな場所で語っている(笑)
不景気も、恐慌、台風、地震もマスコミにとってはもはや視聴率(部数)のネタでしかない。しかも今回は単純なジレンマさえも見えないで、不況・不景気報道の暴走がはじまった。視聴率(部数)のために暴走したのはいいが、結果、宣伝費抑制、広告出稿抑制となり、自分で自分の首を絞めていることさえ気がついていない。視聴率(部数)かせぎを正義に見せようとするから余計にへんちくりんな報道になっている。
車が売れなくなっています、というニュースの後に、車のCMが流されたところで、白けてしまう(笑) 当然だ。
ケータイが売れないのともよく似ている。自分はSHの905iだが、906も次のニューシリーズも手にとってみたがさほど魅力を感じなかった。通信速度が劇的に変わるくらいなことがないと、まっ今のままでいいやと。車なんかでも毎日がわくわくもっと楽しくなるくらいのニューモデルが出ない限りは、別に今のでいいんじゃないのとなると思う。
それって、世界金融危機と無関係ではないが、企業の開発力の問題も大いに関係しているが、そこは追求しない、できないことになっている。
1/20、オバマ大統領がリンカーンが使用した聖書に手を置き宣誓した時から、アメリカは良くも悪くも変わるのは確かだ。その後、いい方に出た場合、オバマ効果とかなんとか騒ぎ立てて、日本も続けとでもいうのだろうか?
しかしもう遅い。フィギュアスケート番組・ニュースすら様々なしがらみから公平に放送できなかったTVにもはや信用性もなく、新聞ももはや同様だ。
スポンサー制約と視聴率(販売部数)の原理でしか動いていないメディアは、それこそ過去の産物となりつつある。なくなりはしないが過去の産物となりつつある(笑)世界金融危機はそれを明確に示すことになった。とても皮肉なことだが、いい教訓になったと思う。


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30数年広告畑で畑を耕しています(笑)コピーライターでありながら、複雑系マーケティングの視野からWebプランニング、戦略シナリオを創発。2008年2月より某Web会社の代表取締役社長に就任。snafkin7としてのTwitterはこちらからどうぞ。Facebookはこちらから。
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