2010年05月03日

「データ」より「声」を重視すべきか

2008.08.19 CNET JAPAN掲載

マーケティングが停滞する時、そこには必ず画一化と陳腐化がどこかに生じている。その原因として、データ(POS)を重視しすぎたり、マニュアル化を徹底しすぎたりで、一見、客観的に見える素材を信じすぎているケースが多い。
仕事でいくつかのビジネス現場の話を訊く機会があったが、業態は違っても同じ流れが生じている。フードの方でも今は、全店舗共通のマニュアルを使うことはないらしく、それぞれの店で独自のメニューを作ったり接客の工夫をしていたりしている。その方が同グループで食い合いをすることなく、客の方も新鮮味を感じるらしい。ファッションの方でもPOSデータ偏重の売場づくりをしていると個性がなくなり、逆に客足は遠のくらしく、接客から得られる顧客の声を重視して、商品開発をしたり、エリアごとのオリジナル性を尊重しているとのこと。
効率経営の先には、統一化があるものと思っていたが、現実には逆の流れが生じている。そして何よりも「データ」から見える傾向よりも、対面から得られる「生の声」に真剣に耳を傾けている。
自分自身も同じような経験がいくつかある。Webを使ってアンケート調査を実施した時、効果的な戦略シナリオが紡げるのはたいがい、シングルアンサーやマルチアンサーから得られる数字的な傾向ではなく、少数派であってもフリーアンサーで複数の人々が同じ意見を主張している時であったりする。おかしなもので、何回もWeb調査でフリーアンサーを洞察していると、十人十色の意見というのはないのではないかと感じてくる。たいがい人の意見というのは、あるテーマに対して、7〜8のパターンに集約でき、いつも意識しているわけではないが、7〜8の群におさまってしまう。日本語では綿密なテキストマイニングは無理かとあきらめかけていた時もあったが、今では大規模調査であっても、フリーアンサー項目を多目に入れる。調査会社の担当者から、この数でフリーアンサーに目を通すのはツライですよと言われても、頑固として入れる(笑)ツラクても実際、貴重な意見が多く、全体を読むと時代の気分がうかがえるので除外するわけにはいかない。しかし一番いいのは(時間と予算があれば)スクリーニングして、対象者に実際に集まってもらって、対面でしつこく聞き出した時の意見のように思う。時間と予算に限りがあるから、フリーアンサーでなんとか抽出しようということになってしまっている。
Web上での口コミやバズマーケティングが大きく取り上げられた時期もあったが、それは「データ」なのか「声」なのか。当然、「声」と思っている人が多いが(自分もそう思っていたが)、意外と「半生声」なのかもしれない。
何故なら、声の抑揚や強弱や真剣な顔なのかそうでないのか本当のところ、わからないから…。演劇のシナリオを本で黙読しても全然面白くないが、役者が語ると全く生きたものになるように、単なる言葉と語る声は全然違ったりします。
Web調査や口コミサイトはとても便利だし、昔では考えられないスピードで意見の抽出ができる。しかし、最近、自分自身、比較サイトを見たり、ネット通販でモノを買う時、評価などの声に、あまり参考にならないなと感じることが多くなっています。Web上の口コミもだんだんとパターン化してきているのかもしれない。
やっぱりビジネスは人と人、なんていう気はさらさらないですが、時代の貴重な気分を拾いたい場合は、文字面を追っかけてるだけではダメなのかもしれない。時代の貴重な気分は、まだ言葉になっていない場合が多いですから…。
そういう意味では、検索エンジンに打ち込まれるワードの方が、人の欲求を表していて面白いと思うことが多い。それは、また次の機会に書いてみます。


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30数年広告畑で畑を耕しています(笑)コピーライターでありながら、複雑系マーケティングの視野からWebプランニング、戦略シナリオを創発。2008年2月より某Web会社の代表取締役社長に就任。snafkin7としてのTwitterはこちらからどうぞ。Facebookはこちらから。
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