2007年05月12日
マーケティング曲『I LOVE YOU 』尾崎豊

国内では絢香や中島美嘉、宇多田ヒカルが歌い、宇多田のライブでは、『I LOVE YOU』を歌いながら感極まって途中で号泣してしまい、もう一度歌い直すというシーンもあるくらい、この歌は何故か心に響くものとなっています。
ドラマ『北の国から'87初恋』の再放送をケーブルTVで見ていると、吉岡秀隆が東京へ行くトラックの中で、この『I LOVE YOU』をウォークマンで聞き泥まみれの1万円札を握りしめて泣くシーンがあり、『I LOVE YOU』は今聞いても凄い力をもってるなと改めて思うのですが、ウィキペディアを見てみると…以下の記述がありました。
『この曲が創作された経緯は、プロデューサーである須藤晃の提案で、「アルバム用にバラードがもう1曲欲しい」と言われ、困惑した尾崎がその場で出だしの「I LOVE YOU♪〜」の部分を即興で口ずさみ、それにヒントを得た須藤がコードを付けて完成したといわれている。また、同曲のイントロ部はアレンジャーの西本明が作曲した。尾崎豊の代表曲として後世に伝えられているが、尾崎本人としてはそれほどの完成度の楽曲とは認識しておらず、さらなる完成度の高い楽曲の制作を目指していたが、この楽曲を超える知名度の作品は完成に至らずして尾崎は他界した。』
尾崎豊自身はそれほどの完成度の曲と思っていなかったというのがミソのような気がします。他の尾崎豊の歌詞と比べると、この曲だけが天井から二人を眺めている客観性をもっていることがわかります。
二人はまるで捨て猫みたい。
それから二人はまた目を閉じるよ。
夢見て傷つくだけの二人だよ。
若すぎる二人の愛には…
など、語られていて、一人称発信ではないのです。
まわりのスタッフからねだられ、仕方なしに口ずさんで作った曲、ここに尾崎豊がニーズに応えているという行為へと自然とつながっていったよなよな。
しかも自分では完成度のないと思っている曲が大ヒットしていくと、あまり面白くなかったのではないでしょうかね。しかしピュアで社会と調和できない彼が初めて社会と調和できた曲ともいえます。彼自身はマーケティングをして曲をつくるタイプではないので、この曲だけはその回路に入ってつくった曲なのだと思います。歌謡とはやはりマーケティング回路に入ってつくった曲がもの凄く強いことがわかります。
そして、彼は二人の世界をイメージングしながら、作詞能力を思う存分発揮しています。
ラストの『悲しい歌に愛がしらけてしまわぬように』という締めの転換は才能がキラキラしています。
個人の才能と社会のニーズがビタッと遭遇するのは、希有なことなんでしょうか。というか自力でできないことなんでしょうか。計算してもズレてしまうことが多々あります。
個人的には可能だと思っていますが…。とにかく状況の中にヨレヨレになるまで身をひたすこと。状況の外に逃げ出した時、その人の才能も終わるのだと思います。