2015年11月

2015年11月16日

ギターの似合う女-山本彩 論

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先日TVで、できたてほやほやのNGT48が「ヘビーローテーション」を披露していたが、北陸・東北ラインのメンバーを取り入れたこのグループにも今までと色合いの違うオーラを発している娘が数人いて、新潟という場所でメジャーアイドルがどう育つのか楽しみだなと思った。そして、まだ3.11の洗礼を受ける前、2011年の新年から3月の間にNMB48の劇場公演を見に行ってた頃が懐かしくなった。大阪も大都市でありながらメジャーアイドルが育ったことがないだけに、NMB48の公演のパフォーマンスは最初から崖っぷちの必死さが漂っていた。

NMB48劇場は最新の音響システムを採用しており、どの席に座ってもほぼ同じ反響で音が体感できる素晴らしいものだった。AKBと比べてかなり恵まれている環境ではあったが、メンバーの方に余裕がなく、ピリピリとして緊張感が伝わってくる。しかし初公演のA-3rd「誰かのために」の1曲目「月見草」が終わる頃には、圧倒され動けない自分がいた。今まで前衛的な舞台やダンス系のレイブにも割合参加していた自分だったが、渡辺美優紀と山本彩、このツートップのダンスはただものではない、それを一番前で目撃してしまったのだ。その後、目はこの二人を追うことになった。渡辺美優紀はどちらかというと天才肌、与えられた振りに自分なりの色をつけて大きくみせていた。一方、山本彩は指先からつま先まで全神経が行き届いていて練習量が半端ないという印象を受けた。また「BIRD」では、ヴォーカルの魅力にもやられ、山本彩は今までのアイドル系譜でもどこにも属さない稀有な存在なのかもと思い始めた。

公演後のハイタッチの時、山本彩はラストにいたので、また握手会と違って特に“剥がし”もいないので、山本彩とちょっとだけ喋れたのは幸運だった。「ありがとうございます!!頑張ります!!」と言いながら彼女は目をそらさない。キラキラした目で真剣に対峙してくる。NMB48に入る前、中学生時代に既にソニーと契約して「MAD CATZ」でギターとヴォーカルを担当してメジャデビューしていた経験を持つ彼女だからプロ意識は当然、他のメンバーよりは持っているとも言えるが、そういう貫禄のようなものではなく、すべてまっさらで頑張りたい強い意志のようなものを感じた。未だに「ありがとうございます!!頑張ります!!」の声音が印象的で耳から離れないのは、そんな魂のこもった「ありがとうございます!!頑張ります!!」を聞いたことがなかったからだと思う。

Guitar magazine 2015.10月号に横山健とギターについて対談しているが、NMBに入ってしばらくギターを弾いていない時期があったと語っている。AKBの生バンド「GIVE ME FIVE!」の時も山本彩はギターが上手すぎるので外されている。山本彩は、コントで何回も演じているが、大阪アイドルの姿を真剣に模索していた時期と重なるのではないかと思う。忙しいということもあるが、あえてギターを握っていなかった。しかも本人は器用すぎるので、漫才でもツッコミ役を見事に演じ、バラエティ番組でもキレのあるセンスを全開に頑張っていた。しかし、キャプテンでもある山本彩が思っている以上に、他のメンバーのブロ意識が薄かった。ツートップと言われ、渡辺美優紀と絶妙のコンビと見られていたが、渡辺美優紀は2度の不祥事でNMBの推進力を弱めた。山本にいちばんなついていた次世代センターと言われていた城恵理子まで一度は脱退してしまう。そうこうするうちに2期生、3期生でアイドルらしい矢倉楓子、渋谷凪咲、谷川愛梨、村瀬紗英、加藤夕夏、太田夢莉が揃い、薮下柊がセンターを務めるまでなると、NMBのカラーはガラッと変わっていった。山本teamNは健在だが、今、山本彩は自分の役割をみつめ卒業も視野に入れ始めている。

そこで、最愛のパートナー、裏切らないパートナー、と見渡した時に、ギターが再び目に入る。Guitar magazine 2015.10月号で「やればやった分だけ結果が付いてきてくれるのがギターの魅力だと思う。」「自分とギターだけあれば音楽を奏でられるというのはすごく素晴らしいと思います。」と語っているのは無意識であっても意味深だ。今までチームのために、グループのためにを一番に考えていた山本彩が再び個と向き合っている。メンバーにギターを教えている面もあるとはいえ、山本彩はギターと歌で何かを表現したいと強く思っている。

2015年3月「UTAGE! 春の祭典 2時間スペシャル」でなんと山本彩はChageから指名されて「終章」をギター生演奏で披露した。アスカのことでいろいろあって疲れ果てたChageは自分の原点曲を新しい世代の山本彩に弾かせて、奮起しようと期待した企画だった。「21年間でいちばん緊張した」とTwitterでつぶやいた山本彩だったが、この生演奏は自分の原点探しのきっかけにもなったのではないかと思う。

これ以来、山本彩が人前でギターを披露する機会が増えている。そして、楽曲としてはAKB48となっているが、実質、山本彩が歌っている NHK連続ドラマ あさが来たの主題歌「365日の紙飛行機」へと至る。またAKB48ショーではアコースティックギターで5分間「365日の紙飛行機」を熱唱した。

アイドルを全うしようとした山本彩も素晴らしかったが、ギターを再び握りはじめた山本彩はもっと素晴らしい。愛用ギターがPaul Read Smith SE Oriantiというのも可愛い。ポジションマークの鳥のように、山本彩が本当の自分を自由に羽ばたかさせる日は近いと思う。

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30数年広告畑で畑を耕しています(笑)コピーライターでありながら、複雑系マーケティングの視野からWebプランニング、戦略シナリオを創発。2008年2月より某Web会社の代表取締役社長に就任。snafkin7としてのTwitterはこちらからどうぞ。Facebookはこちらから。
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