2013年03月

2013年03月18日

まほろ駅前番外地は、良質なドラマインサイトだ

新聞を開けば自分の広告コピーが掲載されている。くらいに広告文章を量産していた頃、まったくの新人だが才能のあるコピーライターの卵を引き受けていた頃があった。広告代理店のディレクターの講座の教え子であるパターンが多かったが、一人だけズバ抜けてセンスのある娘がいた。「天下り」が良いことだと勘違いしているような一般常識のない娘だったが、情報の仕入れ方には感心したことがある。

「TSUTAYAにはいっぱいビデオ(当時はビデオ)があるでしょう。“話題作”なり“人気作”なりいろいろ書いてあって、見てみるんですけど、自分的には面白くないものもいっぱいあって…で、そのうちハズレのない選び方を学んだんです。」

「へぇ〜、どんな?」

「店側が表示する言葉は全部無視して、いつまでたってもずっと借りられてる本数が多いもの。新旧関係ないんです。ダウンタウンのシリーズでも極端に借りられてる本数が多いナンバーのものは、やっぱり見てみると面白い。」

その娘は現場のコツを覚えると、半年もたたないうちにラジオ・ポスターの仕事をこなし、宣伝会議のコピー大賞の金賞までとって、社内恋愛やらいろいろあって、持て余している感じもしていたので、「電通でも行ったら?」と言ったら、本当に電通に行ってしまった(爆)

まぁ、そんなことはどうでもいいんだけど(笑)、TSUTAYAでのビデオセレクトの話はずっと頭に残ってて、それに該当する初めてのパターンが「まほろ駅前多田便利軒」という映画のDVDだった。そんなに映画では話題になった印象もないのに、TSUTAYAに何回行っても大量に借りられっぱなし。なんじゃこりゃ、と思ってずっと空くのを待っていた。やっとタイミングよく借りられて見ると、期待していた以上のクオリティで、まぁ、あの娘の言ってた意味がはじめてわかったような気がした。大森立嗣監督のこの作品は、現在の哀愁がなまなましく表現されていて、結構、心の深いところで感動していたつもりだったが、時間がたつにつれ、印象に残っているのは、A.行天(松田龍平)のおかしな走り方とB.多田(瑛太)の松田優作のセリフをパロってるシーンで、この映画の良さを人に伝える時、いつのまにかA.とB.を中心にしゃべっている自分がいた。おかしいなっと思いつつ、いや、これだけじゃないんだけどっと。

そして、映画「まほろ駅前多田便利軒」の続編「まほろ駅前番外地」がドラマでやるというので、楽しみにしていたが、上のA.とB.を増幅したカタチで、毎回、5回くらいみてセリフも全部覚えてしまうくらいはまってしまった。1月1日よりブログを更新しなかったのもその理由の一つ。「まほろ駅前番外地」が終わるまで、ブログは書かない。ていうより、ブログを書く暇があったら「まほろ駅前番外地」を見る。と言う方が正確か(笑) ただ、最終回を迎えてしまったら、おそらくかなりの脱力感に陥る可能性があるので、9・10話を見終わった時点で、一回書こうというのが今であるわけです。

「モテキ」の監督 大根仁さんがこの続編に関わったこと、何よりも感謝したい。おそらく、和もののドラマでこれだけはまったのは初めてだから。

「まほろ駅前番外地 くらしの手引き」

などは、ストーリーをつくるもの、映像をつくるもの、には参考になる話が多々あって、さらに惚れ惚れするわけです。

11話・12話では、エンディングに向けて、行天と多田の距離を離しにかかろうとするのでしょうけど、また、大根仁さんと真木よう子というのはつながりが深いから、いい話になるのだろうけど、今のところの自分の順位をつけておきます。

第9・10話 クソ可愛いJK、ボディガードします・まほろJKの友情、つながせてもらいます
第3話 キャバ嬢ストーカー、捕まえます
第2話 麗しのカラオケモデル、探します
第1話 プロレスラー代行、請け負います
第6話 出会い系サクラの恋、手伝います
第4話 秘密の蝋人形、引き取ります
第5話 ややこしい過去の整理は、お断り致します
第8話 恋敵の婚約指輪、隠します
第7話 廃棄拳銃、引き取ります

で、女性ゲストの時が点数が高いのは本当に個人的な好みだけど、特に第9・10 話あたりは、映像処理が本当に細かくて、不安な心理の時はカメラを揺らしているし、出頭する早朝のシーンのスローモーションの美しさ、JKの膝の裏をアップに撮るサービス、1本のたばこ譲りあうシーンなど、かといって悲劇でもなく喜劇でもない、そこはかとない現在的な空気感、今までのドラマ・映画のエッセンスが盛られた、とてつもなく良質な作品だと思います。

おそらく、ドラマの中で吸ってる煙草の本数がいちばん多いのは「まほろ駅前番外地」じゃないでしょうか。JT提供かと思うくらい(笑)深夜帯ならでは演出ですね。

最近では、ドラマの反響を視聴率と違って、視聴熱量とか、エンゲージメント的なクラウト、ポストランクなどの指標があって、「まほろ駅前番外地」はそれらが高いと思うのですが、そういう細かいこととは別に、このドラマには、表現の大切な部分がいっぱい入っていると思います。過去のいいものが凝縮されていて、本音で本音を突いてくる、それも重くならないように突いてくる。心を動かす、揺さぶる力を持っている本当にいい作品だと思います。

できたら12話で終わらず、昔のドラマのように1年間、2年間続けて欲しい。くらい。

このシリーズが今後どのような展開をするにしても「まほろ駅前番外地」はいろんな意味で、自分にって宝物になるはずです。そして、最終回が本当に楽しみです。



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snafkin7
30数年広告畑で畑を耕しています(笑)コピーライターでありながら、複雑系マーケティングの視野からWebプランニング、戦略シナリオを創発。2008年2月より某Web会社の代表取締役社長に就任。snafkin7としてのTwitterはこちらからどうぞ。Facebookはこちらから。
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