2011年02月

2011年02月27日

桜からの手紙-提供クレジットの新手法

昨日から連続9夜のAKB48のドラマが始まったが、提供クレジットの入れ方に革命的な手法が使われていた。

革命的? またまた大袈裟な! と思われるかもしれないが……

ある意味、サイエンス、ある意味、インサイト、なのです。

まずは、渡辺麻友(まゆゆ)とNECのロゴセット

mayuyu


次に、前田敦子(あっちゃん)と十六茶のロゴセット

atsuko


これはかなり計算されています。

AKB48の実質エースの前田敦子と次期エースと呼ばれている渡辺麻友。AKB48ファンなら、その顔を食いつくように見るが(笑)その顔真下に大きく企業ロゴやブランドロゴをわざわざ持ってきている。

これは印象的だ。

しかも、渡辺麻友は俯いていて見上げる動作。

nayu3
mayuyu


前田敦子は後ろを向いていて、振り返る動作。

atsko2
atsuko


視聴者がまるで声をかけている感じなのだ。
「まゆゆ!」「あっちゃん!」っと……

そして、無意識にNEC、十六茶に好感がすり込まれる。

消費者はそんなバカじゃないと思われるかもしれないが、これ、おそらく、見る前と見た後を調査したら、確実に数字が動くような気がする。というか、調査済みかもしれない。

こんな贅沢な提供クレッジットの入れ方は見たことがない。

最近、ドラマやアニメでCMと話がつながっているパターンもある。プリキュアの新シリーズでは、スイートプリキュアがラストシーンで持っていたアイテムが、そのままCMになだれ込み、CMが始まるパターンがある。うちの子供なんかは、もうだまされて、すぐにそれをおねだりする。「子供魂じゃないか!」というと「ミク、まだ子供だよ!」と言い返してくる始末。

さすがに、このクレジットシーンを見て、NECのパソコンや十六茶を買いに行く大人はいないと思うが(爆)好感度は上がっているはずだ。AKB48のしかも前田敦子、渡辺麻友推しのファンに限るが…しかし、この二人は国民的アイドルの中でもメガトン級だから、数字は動いてしまうのだ。

CMにピンでよく起用される二人。

連続して使われているから、好感度の数値は確実に上がっているはずの二人だ。

フランスのロランバルトは、こういう洞察をよくしていた。スパゲッティの広告写真一つで本を一冊書いていたくらいだ。彼が生きていたら、どんな表現をつかっただろう。

NECという記号に、CGアイドルが魔法の記号を付加し、その意味するものと意味するものは溶け合って、意味されるものに昇華し、消費という行為で意味するものは再び具体化されて、至福の快感を得るだろう。とか(笑)

あるいは、顔という記号は実は腸が裏返った記号である。企業ロゴはアイドルの内臓に飲み込まれ、優しく包まれながら、アイドルの一部として受け入れやすい意味性を生成する。これは折り紙で鶴を作るように確実に折られ計算されているパースなのだ。とか(笑)

広告代理店はAKB48を使ってあらゆる実験をしている。
40億円を横流しにするバカ部長もいることはいるが(爆)正統にサイエンスをやっているスタッフもいる。

しかし、一クラスを主要メンバーを埋めてしまえるAKB48って凄いと思います。人数いれば何でもできちゃう。そして、北原里英の役を見てわかるように、本を読んでいたりとか、割合、本当の性格に近い役を演じていて、名前もそのままというのがいい。

渡辺麻友推しとしては、本人が主役の回も楽しみだが、NECの宙に浮いてしまうCMを見ている時はシアワセいっぱいだった。

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らぶたん(多田愛佳・一番左)の表情に注目!!

9夜すべてが終わると、残酷にもすべての視聴率が出るだろう。それを受け入れ、次に進むところがやはりAKB48の凄いところだと思う。

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「誰かのために」は今効くメッセージ

breo第二期生のオーディション募集も始まったNMB48。そのNMB48のグリコBREO CMの完成版を見て驚いたことがある。渡辺美優紀(みるきー)センターは順当として、このCMの音楽に、NMB48のテーマ曲とA3rd(現NMB48 1st公演)の主題曲「誰かのために」が挿入されていることだ。

「ライダー」を含め、「誰かのために」公演の「誰かのために」という曲は、今の世に発するメッセージ曲として、とてもシンプルだが強く太いものがある。

誰かのために
人は生きてる
私に何が
できるのでしょう?

もし、この言葉を信じ、胸に焼き付けたとしてたら、この世の中は少しづつ変わっていくのではないか?

2008年6月におこった秋葉原の殺傷事件の犯人でも、2006年に既に行われてたAKB48「誰かのために」公演にふれて、このメッセージを聞いていたとしたら、何かが変わっていたのではないか?そんなことまで想像してしまう。

どこかで季節の風が
そよいで
木々が次第に
揺れるように
愛とは伝えるもの

一人ぼっちじゃ
生きていけない
誰かがいるから
私がいるの

誰かのために
人は生きてる
私に何が
できるのでしょう?

「秋元康作詞 AKB48 誰かのために」

過去、こういうラインのメッセージで芝居や現代詩でいろんな表現があったが…

朝日のような夕日を連れて
僕は立ち続ける
つなぎあうこともなく
流れあうこともなく
きらめく恒星のように
立ち続けることは苦しいから
立ち続けることは悲しいから
朝日のような夕日を連れて
僕は ひとり
一人ではさびしいから
一人では耐えられないから
一人であることを認め合うことは
たくさんの人と手をつなぐことだから
たくさんの人と手をつなぐことは
とても悲しいことだから
朝日のような夕日を連れて
冬空の流星のように
ぼくは ひとり

「鴻上尚史戯曲 朝日のための夕日をつれて」

第三舞台「朝日のような夕日をつれて」のこの台詞はかっこいいが何の解答にもなってない上に、吉本隆明の「小さな群への挨拶」の焼き直しだ。というかモノマネだ。

ぼくはでてゆく
冬の圧力の真むこうへ
ひとりっきりで耐えられないから
たくさんのひとと手をつなぐというのは嘘だから
ひとりっきりで抗争できないから
たくさんのひとと手をつなぐというのは卑怯だから
ぼくはでてゆく
すべての時刻がむこうがわに加担しても
ぼくたちがしはらったものを
ずっと以前のぶんまでとりかえすために
すでにいらなくなったものに思いしらせるために

「吉本隆明詩集 転移のための十編 小さな群への挨拶」

「朝日ような夕日をつれて」の台詞も吉本隆明の詩も聞こえはかっこいいが、個を極めることはいいことだが、実は社会性のことなど何も考えていないことがわかる。完全な個人幻想だ。こんな発想ではエジプトの最近のデモ勝利も起こらなかっただろう。

そして、この国は政治も社会はズタズタだ。

表現のかっこよさよりも、もう一度、関係性の修復をはじめなければならない、このあまりに馬鹿げた虚構の国は…

AKB48では、単にマニアの曲で終わっていた「誰かのために」。この曲が5年ぶりにNMB48出演のグリコのCMで世に広まることはとてもいいことだと思う。

誰かのために
人は生きてる
私に何が
できるのでしょう?

このメッセージ、一人一人がつぶやき、考え、何かをはじめる時、何かが大きく変わっていくことを私は期待する。

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「最下層アイドル。大堀恵」はマーケティング本だ
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2011年02月20日

「最下層アイドル。大堀恵」はマーケティング本だ。

meshibe「地下アイドル」で検索していたら、元AKB48で現SDN48の大堀恵(めーたん)のこの本が目についた。大堀恵も篠田麻里子同様カフェ組だが、AKBに入る前は、地下アイドル“宇宙人の友だち・めーたん姫”でかなり人気があったらしい。この本は、2009年9月発刊だが、直感的に面白そうだったので早速アマゾンで取り寄せた。そして読み進めるうちに、ちょっとコレ、アイドル本としては、極上の内容ではないかと深く引き込まれていく自分がいた。

大堀恵は、ネ申TVで目にしたりしていたが、ショーバトでサタディナイトフィーバーの替え歌を歌っている時に、強烈な印象を受けた記憶がある。「AKBにいたのに〜知れてない〜SDN♪」と歌うフツーの声があまりにセクシーで、このワンフレーズだけで、もの凄い存在感を感じた。

ちょっと前の本なので、一通りのことは語られていると思うから、今の時点からこの本の内容を照射してみたい。

2009年9月あたりは、「言い訳Maybe」がリリースされていた頃だから、AKB48の人気はもうメラメラ燃え始めていた時期だが、この時期で、内部にいた大堀恵はこの本の後半で

AKBは最高の集団だ

と言い放っている。そしてAKBという集団が大好きで、愛しており、最年長で、AKBの下層にいてもどうしてもしがみつきたかったと語られている。そして、この本は、飛び抜けた才能がなくても、ど根性を発揮すればなんとかなるというような人生本としても良質だが、ひまわり組の“干され”時期からAKBINGOでのすべり台事件で、思わぬ注目のされ方をし、AKB初のソロデビュー、1万枚の達成を目指しての彼女の経緯は、マーケティングのケーススタディとして感動しながら読んだ。

大堀恵のサバイバル(しがみつき)処世術はいろいろ書いているが、一番最初に出てくる次の戦略は本当に素晴らしい。

「何ができるか」ではなく、「どこが空いているか」を探せば生き残れる。

どんな集団にだって、そこにいる人、それぞれの役割ってあるよね。だから「自分はこの役割をやりたいんだ」と主張するよりも、全体を見渡して、空席のある役割を探したほうがいい。私の場合、それがチームKのセクシー担当だったってわけ。求められていない場所でがんばったってつらいだけだし、どんなにあなたが優秀でも、すでに埋まっている席を奪い取るって凄く難しい。まずは自分の場所をキープすることを心がけて。案外、それが自分にぴったりの場所だったってこともあるんだから。

これは、クロッシング・ザ・キャズム戦略のニッチ市場の選定のようなもので、戦いを略する理想的な戦略だ。

大堀恵はこの考えを自分の中で固めていたがために、AKBINGOのテレビ出演時、カメラを向けられると、逃げるという不自然な行動をとってしまう。自分はAKBのセクシー担当だから、こういう健康的な番組は場違いでもっと若い娘を映してあげて!とカメラを避けた…

これが逆に受けて、大堀恵は面白いということで、板野友美(ともちん)と並んで、クイズ正解によって角度があがっていくすべり台に座るはめとなる。

普通のアイドルなら、2〜3段階で小麦粉の中に落ちて顔を真っ白にするところだが、しがみつき人生の大堀恵は角度90度になっても落ちず、私は勝ったんだから、早く降ろしてと叫びつつ、力つきて小麦粉の中に激しく落ち、それでも小麦粉の中から手をあげてVサインを見せていた。

この収録時に、たまたま秋元康がスタジオにおり、このど根性を間近で見ていた彼は、彼女に大きなチャンスとなる企画をつくる。

大堀めしべ「甘い股関節」でのAKB初のソロデビューだ。
しかし1万枚売れなければAKB卒業という厳しい条件がついていた。

2008年夏〜頃だからAKBのCDは独占禁止法違反騒動の尾をひき、デフスターとの契約が打ち切られ、不安定な時期でもあった。秋元康としても気分を変えたかった時なのかもしれない。

1万枚は到底不可能という感じになった時、大堀恵はお膳立てされたイベントではなしに、自分であちこちに出かけていって、命乞いのようにCDを売り、メンバーの協力もあって最終的に1万125枚を売る。

そしてAKB48もキングレコードとの契約が成立し移籍第一弾の「大声ダイヤモンド」をリリースし、後の快進撃の序章となる好調な販売となった。

大堀恵の色もののようなソロデビューは家族やそのまわりを犠牲にし、AKBメンバーの一部からも批判を浴びたが、その涙ぐましい必死の姿勢はだんだんと理解と共感に変わり、AKB48の背中を押す力ともなった。

「最下層アイドル。」をマーケティング本としたいのは、これほど切実とした臨場感があるからだ。

大堀恵は今SDN48で活躍している。秋元康が「これからは年上のアイドルが流行る」と言っているように、大堀恵のチャンスはまだまだこれからかもしれない。日経エンタテインメント3月号でも、SDN48のライブは大絶賛されていた。

日本語には本来、“生きざま”なんて言葉はない。しかし、大堀恵のような経験はまさに“生きざま”でそれを本音の場所から綴ってくれたことに感謝したいと思う。

また、この本を通して、AKBがどうして最高の集団なのかもよくわかり、今の人気ぶりの根底もよくわかるのだ。

アイドル本で、ここまで感心させられた本はない。最下層アイドル、彼女から学ぶべきものはあまりに多い。









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30数年広告畑で畑を耕しています(笑)コピーライターでありながら、複雑系マーケティングの視野からWebプランニング、戦略シナリオを創発。2008年2月より某Web会社の代表取締役社長に就任。snafkin7としてのTwitterはこちらからどうぞ。Facebookはこちらから。
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